それでもいいと7 〜航海U〜




上陸した街は、人通りも多く賑わっていた。


若者が好みそうな洋服を売る店が、ずらりと軒を並べていた。

あちらこちらから甘い菓子の香りが漂ってくる。
チョッパーは、早くもそわそわし始めた。


「なぁ、ナミ!買い物終わったら、あの店行ってみたいな。
なんか、美味そうな臭いがする!」

「えぇ、いいわよ。でも、しっかりお手伝いしてね。」


買い物となると急に生き生きするナミと、甘い匂いにおやつが楽しみなチョッパー。

二人とは反対に、どこかぎこちないたしぎに、完全に不機嫌なゾロ。


男二人を店の外に待たせ、ナミとたしぎは、アンダーウェアを扱う一軒の店に入った。

「うわっ!」

たしぎの想像を超えた、派手でセクシーな下着が目に飛び込んできた。

「ナ、ナミさん!?私、こんなの、き、着れません!」


ドキドキしながら辺りを見回すたしぎを見て、ナミは笑って手招きする。

「あはは、何もたしぎにそこらへんは、要求しないわ!こっちよ、来て!」


ナミに呼ばれ、店のの奥に進むと、たしぎでも身に着けられそうな
シンプルな下着が置いてあった。

たしぎは、「これなら・・・」とほっと胸を撫で下ろした。



二人であれこれを品定めをしながら、たしぎは動きやすそうな
キャミソールとボクサーパンツを、色違いで3組選んだ。

「ほんっと、面白みがないわね。」

「でも、こういうのが一番使いやすいんです!」


「こういうのさ、着てみたいって思わない?!」

ナミが手にしたショーツは、黒いシースルーのべビードールだった。

「いっ!いつ!着るんですかっ!???こ、こんなの!!!」

顔を赤らめて、うろたえる。


「ふふふ、たまにはね。」

ナミは、たしぎの意見も聞かずに、ひょいと買い物かごに入れて、
会計を済ませてしまった。

もちろん、自分用にカラフルな下着もしっかり購入している。


「さあて、お次はっと。」

店を出て、荷物をポンとゾロに渡すと、今度は洋服の店を回り始める。


何軒か回ると、付き合いきれなくなったゾロとチョッパーは
近くの広場で勝手に休憩し始めた。

「好きなだけ回ってろ。オレ達はここで待ってるからな。」

そう言うと、ゾロは広場に出ていたワゴンから
ポップコーンとアイスを買ってチョッパーに渡した。

酒は売ってないのか?と聞くと、「売っていない。」と言われ、
がっくりして、チョッパーの隣に、ドサリと腰を降ろした。

チョッパーの手にしているポップコーンを目当てに、ハトが寄ってくる。

時々、ニ、三個つまんではほうってやると、
バサバサと奪いあうように啄んでは飛んでいった。


近くの噴水を通る風が、涼しさを含んで、すこしだけましだった。


「ったく、なんでこんなのに付き合わねえといけねぇんだよ。」


思わず声に出た文句に、チョッパーが答える。

「でも、ひさしぶりに、楽しそうだぞ、たしぎ。」



遠目に、店先に並んでいるど派手なシャツを二枚手にして、
どちらにしようか迷っているたしぎの姿が見えた。

隣で、ナミがその柄はどうかと思うんだけど!というようなことを言っている。

「でも、ほら!似合いませんか?」

と自分に当てて見せるたしぎに、案外着こなせそうと納得してしまうナミ。

「ナミさんの、お墨付きなら、二枚買っちゃおう!」と勢いづくたしぎ。

「え、ちょ、ちょっと、たしぎぃ!でも、私、それ、コーデする自信ないわ〜〜!」

買い物の包みをかかえ、満足そうにこちらに歩いてくる二人の姿に
ゾロは、少しだけ、別に荷物持ちぐらいならかまわないかと思い始めていた。




<続> 




H27.9.16